Adobeのヴィーナス Illustrator

ボッティチェリのヴィーナスを見てIllustratorを思い浮かべますか?

今回は、AdobeのヴィーナスとIllustratorの歴史的な話を、“ちょっと”書いてみます。

Illustratorと聞いてボッティチェリのヴィーナスを連想する方は少なくなりましたが、
現在、多くのプロフェッショナルな現場で作画に使用されているアプリケーションと言った時、真っ先に思い浮かぶのは Adobe Illustrator ではないでしょうか。
 

Adobe Illustratorは、Phothoshopとならびデザイナー、DTP業界、写真家、画像加工などのプロフェッショナルから一般ユーザーまで、クリエーターが使用するアプリケーションのデファクトスタンダートとなっています。

 

1987年1月、アドビシステムズ社内用のフォント制作・PostScript編集ソフトウェアであったアプリケーションが「Macintosh版 Adobe Illustrator」として発売されました。
日本では翌年、 Adobe Illustrator 日本語版が発売されています。
その後2003年 アドビ社のブランディングによるCreative Suiteの導入に伴い、Illustrator CS(バージョン11)がリリースされるまで、
製品パッケージ、起動画面のスプラッシュは「ボッティチェリのヴィーナス」をモチーフにデザインされていました。

上は、それぞれの年代バージョンの起動スプラッシュ画像です。(クリックで拡大)
初期の頃、アドビのヴィーナスはモノクロの線画でした。
やがて、3.0〜4.0となり読み込んだ写真イメージをトレースしている様子がデザインされています。
5.0以降はカラー画像の扱い方の変化がみられます。写真そのものへのエフェクトから9.0〜10の複雑なグラデーションを駆使して描かれたビーナスとなるまで、ヴィーナスは Illustrator の成長を見つめてきました。

Creative SuiteとなりIllustrator CS、CS2はスプラッシュ画面が花のデザインへ一新されました。
さらにCS3以降のバージョンでは、アドビはまたしてもブランディングの方向性を変更し、シンプルな単色のボックスに元素記号を思わせる2文字で表したイニシャルのアイコンに変わりました。
各アプリケーションは、Photoshopは Ps、inDesignは Idというようにイニシャルの2文字となりましたが、Illustratorのみは例外的にファイル拡張子として使用されてきたAiとなりました。これはAdobe Illustratorの略でもあります。

Creative Suiteとなりヴィーナスは表舞台から姿を消してしまいましたが、
CS2〜CS5までのバージョン11〜15では、optionキーを押しながら[Illustratorについて]を選択すると、通常のスプラッシュスクリーンとは異なるイースターエッグと呼ばれる裏画面にヴィーナスが表示(下の画像)されました。
しかし、Creative Suiteの最終バージョンIllustrator CS6 バージョン16で、とうとうヴィーナスのスプラッシュ画面は廃止されてしまいました。
古くからのユーザーは寂しく思っていたのかもしれません。

Illustrator CS version11〜CS5 version15のイースターエッグ

ヴィーナスのデザインが用いられたCS以前のIllustratorは、どちらかといえばデザイン分野での清書ソフト・製図ソフト的な用いられ方をしていました。
CSとなり(正確には2000年バージョン9から)アピアランスの要素や透明機能、PostScriptによる3Dモデリング機能など大幅にパワーアップされ、
CS5バージョン15までの間に、ビットマップ画像をベクトル変換するライブトレース、ライブカラー、遠近グリッドや絵筆ブラシなど、清書ソフト的色合いよりも、真にゼロからイラストを描けるソフトへと成長を遂げました。
Creative Suiteの最終バージョンCS6では、64ビットに対応、互換性を犠牲にし、システムの根幹から構造が見直され数々の基礎的で重要なツールが改善されました。機能面ではユーザーインターフェース、レイヤーパネル、RGBコード、線へのグラデーションなどが新しくなっています。

Illustrator CS6 version16 の起動スプラッシュ画面

現在 Illustratorは、アドビ社の新戦略であるAdobe Creative Cloudの導入に伴い、Illustrator CCと名前を変えています。
他のCreative Suiteに属していたソフト群と同様、サブスクリプションによるサービスモデルのみでの販売となりました。
カラーやフォント、プログラム、ドキュメント設定の同期、などクラウドを中心に据えた機能に加え、制作中にドキュメントを自動保存する待望のバックアップ機能が与えられています。
バージョン17以降のIllustrator CCは、CCの後にリリース年を付けた名称となり、
最新版は、Illustrator CC 2021 (バージョン25)です。

リンク ↓ ではより詳しく Illustrator を紹介しています。

Adobe Illustrator CC 2020 については、次のページで紹介しています。

 
※掲載画像はいずれも公式サイトより


参考文献

Adobe:Illustrator

https://www.adobe.com/jp/products/illustrator.html

Wikipedia:Adobe Illustrator

https://ja.wikipedia.org/wiki/Adobe_Illustrator

DTP-TRANSIT:完全に引退?Illustratorのヴィーナス

https://www.dtp-transit.jp/adobe/illustrator/post_1502.html

CRAZY ONE – GLAD DESIGN BLOG:Adobe Illustrator 歴代起動画面集

http://gladdesign.net/2008/09/19/adobe_illustrator_splash/